日本の重金属使用はどうなる?

RoHS指令とは?

RoHS(ローズ)は、2006年に施行されたEU(ヨーロッパ連合)における特定有害物質の使用制限指令のことです。特定有害物質の使用を制限することで、環境汚染や健康被害を抑えることを目的としています。

法令原文:
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2011:174:0088:0110:EN:PDF

RoHS指令の内容

RoHS指令では、電気・電子製品に含まれる6種類の物質の使用制限が規定されています。以下の物質を指定値を超えて含有している電気・電子機器は、EU加盟国内で製造・販売することができません。

物質の規制内容
1.鉛 1,000ppm以下
2.水銀 1,000ppm以下
3.カドミウム 100ppm以下
4.六価クロム 1,000ppm以下
5.ポリ臭化ビフェニル 1,000ppm以下
6.ポリ臭化ジフェニルエーテル 1,000ppm以下
対象製品

以下すべての電子電気機器(交流1,000ボルト、直流1,500ボルト以下)が対象です。

a. 大型家庭用電気製品(冷蔵庫・洗濯機・エアコン等)
b. 小型家庭用電気製品(掃除機・時計・電動歯ブラシ等)
c. 情報技術・電気通信機器(パソコン・コピー機・携帯電話等)
d. 消費者用機器(ビデオカメラ・ハイファイオーディオ、アンプ・楽器等)
e. 照明機器(ランプ類・照明制御装置。ただしフィラメント電球を除く)
f. 電気・電子工具(電気ドリル・ミシン・はんだ用具等)
g. 玩具・レジャー用品・スポーツ用品
   (ビデオゲーム・電気電子部品を含むスポーツ器具・スロットマシーン等)
h. 医療機器
i. 産業用を含む監視及び制御機器
j. 自動販売機(飲料販売機・食品自動販売機・現金引出機等)

くわえて、上記カテゴリに入らないその他の電子電気機器(ただし、軍事用、宇宙用機器、産業用大型固定工具、大型固定据付機器などは除外)、その他、250ボルト未満で電源、電子電気機器を接続するケーブル及び代替部品も6物質の非含有義務が発生します。

※対象機器の強制適用開始時期は、医療機器の2014年7月22日から上記カテゴリに入らないその他電気電子機器の2019年7月22日までそれぞれ段階的に規定されています

上記物質に代わる適切な物質などがない場合は、指令の適用が免除されることもあります。医療器具や指定の蛍光ランプ(水銀)、合金などがこれにあてはまります。

日本では適用されていないけど・・・

RoHS指令はあくまでEU圏内の規制であり、日本やアメリカなどの諸外国には適用されていません。しかし、有害な重金属の使用を規制して電子機器のリサイクルを推奨する動きは世界的な流れになっており、日本でもいつ同様の規制が発令されても不思議ではありません。

また、日本企業の多くはEU加盟国を含むヨーロッパで製品を販売しているため、現時点でも必然的にRoHS指令に準拠することが求められています。

ソニー製品がオランダで陸揚げ拒否 損失190億円超

2001年()、ソニーがゲーム機器「PSone」の欧州向け製品をオランダに出荷しようとしたところ、製品の一部部品に規制を超える量のカドミウムが検出されたとしてオランダより陸揚げを拒否されるという事態が起こりました。

この事態により、ソニーは欧州向け製品130万台の出荷を2ヶ月延期、全製品の部品交換を余儀なくされ、総額190億円を超える損失が発生したと報じられています。

※オランダはRoHS指令以前より有害物質の使用規制が敷かれていた

RoHS指令も近い!?日本の現況

日本では現在(2013年)RoHS指令は適用されていませんが、有害物質の使用を制限する規制が発令されようとしています。特に水銀を規制する国際的な条約「水俣条約」の政府間合意にともない、水銀使用についてはますます制限が厳しくなることが予測されます。

今のうちから水銀を中心に重金属の使用を制限しているRoHS指令に準拠していれば、この先数年後の世界的情勢にも柔軟な対応が可能です。製品を輸出している大手企業を中心に、早めのRoHS指令対応が叫ばれています。

水俣条約 2020年以降、水銀使用製品の製造・輸出入を原則禁止することを盛り込んだ「水俣条約」が国連の政府間交渉で合意されました。水俣条約という名前は日本で発生した水俣病を世界で繰り返さないという決意表明でもあり、約150ヶ国が参加します。発効に向けた具体的取り決めにともない、日本国内においても水銀の取扱いに関する制度の制定が急がれています。
資源有効利用促進法

2006年に改正された法律で、指定省資源化製品・指定再利用促進製品に指定されている製品のうち、パソコンなどにおいては再生資源の品質低下やリサイクルを阻害するおそれのある特定有害物質を管理すること、下記「J-MOSS」に基づいて含有表示を行うことが規定されています。

対象機器:テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、衣類乾燥機、パソコン
有害化学物質:鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテル

日本工業規格
(J-MOSS)
通称「日本版RoHS(JIS CO950)」と呼ばれるJ-MOSSは、特定の有害化学物質の含有表示を規定した規格です。上記「資源有効利用促進法」の規定に基づき、具体的な物質や用語、表示方法などを定めています。RoHS指令との大きな違いは、「含有してはいけない」ではなく「含有してもいいが含有表示をしなければいけない」という規定であることです。
JGPSSI 法規制ではなく、グリーン調達調査共通化協議会という民間企業団体における統一基準制定への動きがありました。2008年にJAMPとの共同で「製品含有化学物質管理ガイドライン(第2版)」が発行されています。

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